本物の朱肉が知りたくてメーカーに直接行って詳しく調べてみた。

世界中で朱肉を使う国はほぼ日本だけでしょうか、毎日の出勤簿や契約書・稟議書など一般社会人が使う「朱肉」
私、五代目が当然知っているであろうはずが、力説出来るほど深く朱肉を分かっていなかったので調べてみました。そんな今日は朱肉について書いてみます。

はんこを捺す

まずは念のためはんこの歴史背景から見ていきましょう。
はんこの起源にはこれまでブログで何度も触れてきましたが、
メソポタミア文明が栄えた紀元前5千年頃から今で言う“はんこ”はその当時はお守りの様に使われ名前を捺印する使われ方はしていませんでした。その当時は朱肉などインキは使わず粘土状の物にギュッと押し当てる使い方がされていました。

朱肉(印肉)は中国の南北朝時代(なんぼくちょうじだい)から使用されていたと
文献記述にはありますが、主に庶民が使う様になったのは隋唐時代に公文書に必ず捺印される様になりました。
では、日本ではどうでしょうか?
仏教の伝来と共に渡来し奈良時代には官印として使用されるようになり、以降豊臣・徳川時代は専ら公文書に朱印を使いました。江戸時代に武士階級のみ赤い朱肉の使用が許され庶民は黒い朱肉を使っていました。

明治の初めに太政官布告令により署名捺印をもって正式書類とする印鑑条例が発令されて、その必要性から御朱印師の手により安価な支那朱を使い製造されていました。当時はとても貴重な朱肉。とても高価な為安価な製造法の開発が急がれ明治27年頃印刷局勤務の技師の研究によって、国産の朱を作ることに成功。一般官庁に朱肉を配布されるようになりました。

さて、本題の朱肉について朱肉を製造している大阪の工場へ行きお話を伺ってきました。

朱肉の成分

・銀朱「硫化水銀」水銀は猛毒なので現在は使用されていませんが
 (現在は同等の朱を使用)
・ヒマシ油 朱肉の展色剤として最上の精製された物
・松脂、白蝋、もぐさ、パンヤ、和紙(飛騨和紙)
これらをよーく練り合わせます。
配合や練り方など詳細はお答えいただけなかったが、和紙やもぐさは繊維をほぐしてゴミを丁寧に取り除き綿状にしています。
高価な朱肉「落款用、書画用」は天然和紙の配合に違いがあり繊維があまりくっ付かず
価格が安い「証券用」など事務作業向きは繊維が多いと聞きました。
※ネバリを出すために日まし油、松脂(松ヤニ)や白蝋(ろう)を入れる。
※考察し追加いたします2020.08月もぐさの原料はヨモギです。乾燥させたよもぎの葉のみを使います。多くはお灸に使われるそうです。
朱肉原料02

朱肉原材料「ひまし油」

朱肉原料01

朱肉原材料練り込む前

銀朱とは

朱のことを「たん」または「に」とも言い天然に産する朱砂をすり潰して作った
赤色顔料のこと。その中でも特に品質の優れた朱砂は中国湖南省辰洲産の「辰砂」と呼ばれ現在は辰砂は硫化水銀鉱の鉱物学名にもなっています。

水銀から作られる朱は歳月を経ても変質や変色をしないことから
古来中国では萬古不易の象徴とされ不老不死の霊薬とも信じられていた様です。

日本でも古墳時代の棺内部は朱色で赤く塗られ屍に朱をふりかけた例も多くみられます。
また、後世になると不老不死のような神がかり的行為を神聖視された「朱」をめぐり尊厳な神社仏閣や宮殿を朱塗りとなりさらに権威の象徴とされ朱色の門(東大の赤門)や高貴の色、朱印となりました。

はんこ朱肉練る

朱肉を練る

朱肉仕上がり

新しい練り朱肉の状態はキレイです。

練り朱肉の生産量

練り朱肉の製造は新しい朱肉(スポンジ朱肉)に台頭され印肉総生産量の30%ほどになっています。
事務仕事では速乾性が台頭しスポンジ朱肉の方が便利に使える事も理由になる様です。

量り売りもしています

お気に入りのケース(記念品の器・金属・陶器)へ練り朱肉を量り売りもしています。
書画用1g:100円・落款用1g:80円・事務用1g:50円(仕入れにより変動します)
まずはメールでお問い合わせください。
鶴見印舗お問い合わせ窓口

資料提供・画像協力

資料提供・画像協力:有限会社唐崎工業
(本記事は工場見学を参考に執筆しています。 五代目)